農業就業環境整備の必要性

—- 労働保険・社会保険 —-

●労働保険・社会保険

 公的保険には、労働保険(労災保険、雇用保険)と社会保険(医療保険、年金保険)があり、労働者数や事業形態(個人事業、法人事業)で適用要件が異なります。
 また、パートタイマーについても労働時間によっては加入する必要があります。

☆労働保険

◆労災保険
 労働者の業務上の事由又は通勤による労働者の傷病等に対して必要な保険給付を行い、あわせて被災労働者の社会復帰を促進する制度です。

 労働者が業務上負傷した場合、使用者は療養に必要な費用を補償する義務がありますが、労災保険により補償が受けられる場合は、使用者は補償する必要はありません。
  
◆雇用保険
 労働者が失業した場合等に労働者の生活や雇用の安定を図るとともに、再就職を促すために必要な給付等を行う制度です。

項目

労災保険

雇用保険

事業
形態

・個人事業所
(労働者常時
  5人未満)

・法人事業所
・個人事業所
(労働者常時
  5人以上)

・個人事業所
(労働者常時
  5人未満)

・法人事業所
・個人事業所
(労働者常時
  5人以上)

適用

任意加入(※1)

強制加入

任意加入

強制加入

保険料
の負担

事業主

事業主と労働者の双方で負担

※1 一定の危険又は有毒な作業を主として行う事業であって常時労働者を使用するもの及び事業主が特別加入 (※2)している事業は強制加入
※2 特別加入 とは、労働者ではないが、労働者に準じて保護することが適当であると認められる一定の者(中小事業主等)に対して労災保険への加入を認める制度。

☆社会保険

◆医療保険
 生活の安定と福祉の向上を図るため、疾病、傷害等の費用負担を軽減するための制度です。

◆年金保険
 生活の安定と福祉の向上を図るため、老齢、傷害等について保険給付を行う制度です。

項目

医療保険

雇用保険

保険の
種類

国民健康
保険

健康保険

国民年金

厚生年金

適用

・個人事業所

・法人事業所
・個人事業所

・個人事業所

・法人事業所
・個人事業所

保険料
の負担

労働者の
自己負担

事業主と
労働者の
双方で負担

労働者の
自己負担

事業主と
労働者の
双方で負担

※事業所で使用される者の2分の1以上の同意及び厚生労働大臣の認可があれば適用。


—- 農作業事故と労災保険制度 —-

●農作業事故と労災保険制度

 全国では、毎年、400件もの農作業死亡事故が発生し続けております。万が一にも悲惨な農作業事故が発生しますと、医療費等の出費がかさみ、家計を圧迫してしまいます。その治療が高度医療ともなりますと、農業所得では賄い切れなくなってしまいます。加えて治療期間が長くなりますと、家族労働への負担が過重になりますので、作業が遅延する等による農産物の品質の低下や、経営規模の縮小・廃止を余儀なくされるなど、農業経営の存続に与える影響は深刻なものとなります。

 近年では従業員を雇用する農業経営も多くなってきましたが、事業主は常に従業員の農作業事故に気を配る必要があります。事業主である使用者は、労働安全衛生法により安全配慮義務を負っておりますので、農作業中の事故で従業員が負傷しますと、その治療費を全額負担する必要があります。
 また、不幸にも従業員が農作業事故により亡くなったりしますと、使用者責任が問われ、被害者に多額の損害賠償金を支払わなければならなくなります。こうした出費がかさみますと、最悪の場合は労災倒産に至る場合もあります。

 これらの対策として、被災者の生活を守る国の労災制度があり、従業員の労災補償はもとより、本来は労災制度対象外の事業主等(農業経営者及び家族従事者)も労災補償を受けることができます。

 農作業事故によるケガ等の治療が全額無料で受けられるほか、休業補償や傷害補償、遺族補償があるなど、労災保険に加入することが必要不可欠となっております。

☆農業者のための労災保険 特別加入制度

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 労災保険は、本来、労働者の業務又は通勤による負傷、疾病、障害、死亡に対して保険給付を行う制度ですが、労働者以外でも、その業務の実情、災害の発生状況などからみて、特に労働者に準じて保護する必要があると認められる一定の者については、特別に任意加入(特別加入制度)が認められています。
 農業者の場合は、次に掲げる3つの区分のいずれかに特別加入 することができます。

◆特定農作業従事者

 年間の農業生産物総販売額が300万円以上又は経営耕地面積2ha以上の規模(この基準を満たす地域営農集団等を含む)で、土地の耕作・開墾、植物の栽培・採取、又は家畜・蚕の飼育の作業を行う自営農業者(労働者以外の家族従事者等を含む)であって、次の①~⑤までのいずれかの作業に従事する者をいいます。

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◆指定農業機械作業従事者

 自営農業者(労働者以外の家族従事者等を含む)であって、次の機械を使用し、土地の耕作・開墾又は植物の栽培・採取作業を行う者をいいます。

①動力耕運機その他の農業用トラクター
②動力溝堀機
③自走式田植機
④自走式スピードスプレイヤーその他の自走式防除用機械
⑤自走式動力刈取機、コンバインその他の自走式収穫用機械
⑥トラックその他の自走式運搬用機械
⑦定置式又は携帯式の動力揚水機
⑧動力草刈機、チェンソー、コンベヤー等の機械

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◆中小事業主等

 農業の場合には常時300人以下の労働者を使用する事業主 (法人の場合はその代表者)及び労働者以外で、その事業に従事する者(特別加入できる事業主の家族従事者等)をいいます。
 継続して労働者を使用していない場合であっても、1年間に100日以上、労働者を使用することが見込まれる場合 には、特別加入の対象になります。
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 なお、中小事業主等として特別加入するためには、

①雇用する労働者について労働保険関係が成立していること
②労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること

の2つの要件を満たすことが必要です。  


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