平成19年度東北・北海道ブロック国際化対応営農研究会を開催
平成19年10月30〜31日
花巻温泉ホテル紅葉館で、100人あまりが参加して、平成19年度北海道・東北ブロック国際化対応営農研究会が開かれた。
この研究会は、社団法人国際農業者交流協会と岩手県国際農友会、岩手県担い手育成総合支援協議会の3者が主催して行われたもので、岩手県で行われるのは初めて。
研究会では、基調講演、県内4農業者の事例を元にしたパネルディスカッションと現地視察が行われた。
基調講演に先立ち、岩手県国際農友会の紺野啓会長からあいさつがあり、来賓の岩手県農林水産部の斉藤恭技監から祝辞が送られた。続いて社団法人国際農業者交流協会の坂元良二業務部長から情勢報告として国際農業者交流協会の取り組みについての紹介があった。
基調講演では、世界12か国に日本酒を輸出している二戸市の「南部美人」の5代目蔵元、久慈浩介氏が講師となった。
久慈氏は、酒米はなるべく地元の顔の見える農業者から買っているが、それでも全体の半分ほどで「米が足りない」。また、米の価格については「高い米で作ると高い酒になるが、値段に見合った品質ならば、それを買ってくれる所はある」と言う。
海外ではアメリカ、イギリス、香港などで日本酒が売れているが、海外を回った経験から「酒は必ず和食とセット。特に寿司はどこでも大人気」だが「米はカリフォルニア米で、食味はどんどん良くなっている」と危機感を表した。
輸出については「特に意識はしていない。隣のおばあちゃんに売るのもマンハッタンに売るのも同じ。これからの農業の選択肢の一つになりうるのでは」と話すが「農業者は即断即決、迅速な対応などの商売の基本に欠ける人も見受けられる。そういう点では輸出するしないに関わらず意識改革は必要では」と苦言も呈した。
続いて行われたパネルディスカッションでは、パネラーとして県内から4人が参加した。
パネラーは盛岡市で花壇苗やトマト、イチゴ等を生産・販売する有限会社サン農園の代表取締役、藤沢理一氏、花巻市で小麦、大豆などを中心に稲作の直播などで経営の確立を図っている有限会社盛川農産の代表取締役、盛川周祐氏、岩手町で大規模な野菜生産を行っている、いきいき農場代表の三浦正美氏、紫波町でドラッグストア経営から転身を遂げ、水耕トマト栽培で周年出荷、経営確立を目指すウィンダーランドファーム代表取締役の橋本正成氏と、いずれも個性的な4氏であった。
コーディネーターは岩手県農業会議事務局長の佐々木由勝、助言者は講演講師の久慈浩介氏とジェトロ盛岡貿易情報センター所長の柳川仁氏。
パネルディスカッションでは、それぞれコスト低減の工夫や農産物の営業、新たな作物導入による収益のアップなど、様々な取り組みが紹介された。盛川氏からはジャガイモ栽培の呼びかけ、久慈氏からは上海での農産物見本市への出品の誘いなど、経営に関する具体的な情報も提供され、ディスカッション終了後には、パネラーや助言者と熱心に話し込む参加者も見られるなど、熱のこもったパネルディスカッションとなった。
2日目の31日は現地視察研修が行われた。
最初は金ケ崎町にある水産物市場のメフレ株式会社を視察した。現在ではセリにかけられる品は1割から2割で、残りは相対取引が主体であり、以前は午前中で業務が終わっていたが、今は営業活動が重要であるといった話を聞いたあと、市場を見学した。市場では衛生管理や品質管理などのための設備や注意事項、気を使っていることなどを確認した。
続いて奥州市江刺区のJA江刺りんご選果場を視察した。残念ながらセンサーを使った選果システムは稼働していなかったが、そのため騒音は少なく、説明は聞き取りやすかった。品質の高いリンゴは手で1個1個箱詰めを行うなど、重要な部分では人手が機械より信頼できるとのことであった。一方で機械にしかできない、非破壊の内部センサーなどの仕組みも取り入れることで、江刺リンゴのブランドを守る工夫も見られた。
研究会はこの視察で終了となったが、来年度は福島県で開催が予定されている。

岩手県国際農友会紺野会長のあいさつ

県農林水産部斉藤技監の祝辞

国際農業者交流協会の坂元部長の情勢報告

南部美人蔵元久慈浩介氏の講演

久慈浩介氏

パネルディスカッションのコーディネーターと助言者

県内4人の農業経営者がパネラーとなった

水産物市場のメフレで設立の経緯等を聞いた

2日目は水沢農業高校の生徒も参加した

常に温度が15度に保たれている市場の中を視察した

江刺リンゴの予冷庫の内部

リンゴの選果の仕組み等の話を聴く

新型の選果システム

リンゴの外見と内部を識別する2系統のセンサー