事例発表資料(寒河江市)

木村農業振興常任委員長
- 発表者の氏名及び年齢
木村 三紀(きむら みつのり) 55歳 - 所属農業委員会名
寒河江市農業委員会 - 農業委員の選挙・選任の別、役職名及び農業委員以外の役職
選挙委員・農業振興常任委員長
寒河江市認定農業者協議会会長
寒河江西村山農協水稲部会部会長
白岩地区体育協会会長 - 農業委員経験年数
7年 - 農業経営の概要
水田 9.7ha
畑 0.3ha
果樹園 1.1ha
採草放牧地 0.5ha - 市町村農業の概要
寒河江市の農業は、1戸当たりの経営耕地面積が92aと小規模だが、水稲と果樹の組み合わせを基本に、野菜、花き、畜産等を加えた複合経営が主体となっている。
特に、米の生産調整を契機に、果樹、花きなど収益性の高い園芸作物の導入が進んでいる。
平成16年の寒河江市の農業産出額は87億4千万円で、果実類53.4%、米19.9%、花き類10.2%、野菜類8.8%等となっており、さくらんぼを中心とする果実類と日本一の農業産出額を誇るバラをはじめとする花き、野菜等の園芸作物が全体の7割強を占めている。農家戸数(2005年世界農林業センサス) 総数 専業農家 第1種兼業農家 第2種兼業農家 自給的農家 2,499戸 268戸
(10.7%)423戸
(16.9%)1,103戸
(44.2%)705戸
(28.2%)農用地面積
(2005年世界農林業センサス)総数 水田 樹園地 畑地 2,288ha 1,427ha
(62.4%)685ha
(29.9%)176ha
(7.7%)農業産出額(平成16年山形農林水産統計年報) (単位:千万円) 果実 米 花き 野菜 畜産 その他 計 農業産出額 467
(53.4%)174
(19.9%)89
(10.2%)77
(8.8%)48
(5.5%)19
(2.2%)874
(100%)米の生産調整にあたって、本市では昭和56年から「互助制度」による集団転作を進め、配分面積を100%達成してきた。実施にあたっては、生産者組織によるブロックローテーション方式を主体とした取り組みが行われ、団地化率が72%と効率的な転作を推進している。
転作作物については、昭和60年代前半までに果樹、野菜、花きなどの園芸作物への転換が図られ、施設栽培など、より収益の上がる作型に変わってきている。中でも、本市の特産物で収益性の高いさくらんぼは、昭和60年代以降100haを越える転作田に新植されている。水田農業ビジョン
「米政策大綱」の決定を受けて本市の水田農業ビジョンは、平成16年3月に策定されているが、農地の利用集積や担い手の明確化と育成の将来方向については、次のように述べている。(抜粋) 〜前略〜
(2)農地利用集積の推進
- 現状と課題
これまでの農地利用集積は、とかく縁故関係による農地の貸し借りが多く見られ、結果的に農地の連担性がなく、点在化することによって担い手農家にとって非効率的な農業経営となるきらいがあった。 - 推進方策
農作業の効率化とコスト低減のためには農地利用集積が不可欠であり、農業委員会・JAが中心となり担い手への集積に取り組むものとする。
このため、JA支所単位に水田営農対策協議会、農業委員、JA等からなる担い手確保と農地利用集積にかかる組織を整備し、1市4町とJA、関係機関で設立する「広域農業活性化センター」との連携を図りながら、担い手の明確化と農地保有合理化事業の活用により農地利用集積を促進していく。
農地利用集積にあたっては、農地の貸し手は前述の組織に農地の貸し借りを全面的に任せることとし、担い手に対して連担した形で農地集積を進めることにより水田農業経営の効率化を図るものとする。
〜後略〜
- 現状と課題
- 農業委員会の主な活動(重点項目)
- 農地常任委員会 農地パトロールの実施
- 農業振興常任委員会 農業者年金加入推進
- 発言の要旨
「山形県寒河江市における農用地利用改善組合設立と農地集積の取組み」(農協・土地改良区との連携による集落営農の取り組み)- (1)これまでの状況
-
水田農業ビジョン策定及び「集落営農推進のための農業関係団体合同会議」開催以前の集落営農の状況は以下のとおり。
- 農用地利用改善組合
- 農用地利用規定が認定された農用地利用改善団体が、13集落で構成する8団体あることになっていたが、実際組織として残っているのは平成10年度に農協支所単位の規模で設立された三泉地区農用地利用改善組合だけ。
他の組織は、主要なハード事業が完了した時点で活動を休止していた。 - その他の集落営農組織
- 集落内の農用地の利用権設定を目的としてJA主体で設立された農用地利用調整委員会が、市内の各農協支所単位であることとなっていたが、活動しているのは南部地区のみ。
農作業受託組織については、ミニライスセンターなど22組織あったが、活動実態がなかったり、地域によっては受託組織がないなどの、ばらつきがあった。 - 地域営農改善計画の策定状況
- 地域営農改善計画については平成13年度において、農協の支所単位で9箇所・全区域策定しているが、集落座談会などでの合意形成がなされなかった地区もあった。
また、「米政策改革大綱」発表以降、いくつかの集落において集落座談会なども開催されたが、計画的な取り組みとはなっていなかった。
- (2)水田農業ビジョン策定以後の取り組み
-
- 農業関係3団体(JA・土地改良区・農業委員会)の連携による農用地利用改善組合設立の取り組み
- 水田農業ビジョンにおける集落営農組織の設立の方針を受けて、農業委員会は、ビジョンの具体的推進のため、委員の研修会を重ねた。
JAでは、寒河江営農生活センターが中心となり、寒河江市地区の農協理事・地域営農アドバイザー及び各支所長、支所営農担当者への研修会を実施し、具体的な推進に向けて検討を行なった。
平成16年12月に、農業委員、農協理事・地域営農アドバイザー及び土地改良区理事全員の合同会議を開催し、平成17年度中を目途に、農協支所単位(9支所)に農用地利用改善組合(以下「改善組合」という。)を設立することを確認した。
推進にあたっては、各地区におけるアンケート調査の実施、集落座談会の開催、加入申込書のとりまとめ、役員体制の確立などの活動を農業委員会、JA営農生活センター、そして寒河江・西村山の農業振興を図るため関係機関・団体で設立された広域農業活性化センターが連携して実施した。
その結果、平成18年7月26日に最後に残った柴橋第一地区が設立されたことにより、以下のとおり市内すべての区域に改善組合が設立された。地区(支所)名 設立状況 - 1.寒河江
- 市内中心部の地区。
市街地の平坦部が多い。
水稲と果樹の複合経営中心。
平成18年4月27日設立。
組合長は、農協理事- 2.南部
- 市の南部の地区。平坦地。
水稲と果樹の複合経営中心だが、施設園芸(バラ、花卉)や施設・露地野菜栽培農家が増加。
平成17年3月4日設立。
同年4月1日農用地利用規程認定。
組合長は、農業委員- 3.西根
- 市の東部の地区で平野部。
果樹と水稲に野菜を加えた複合経営が中心。
平成18年5月10日設立。
組合長は、農協理事
○地区内で農地保有合理化担い手育成地域推進事業(後述)を実施- 4.柴橋
- 市の南西の地区。
一部中山間地がある。
果樹水稲の複合経営中心。
平成18年5月15日設立。
組合長は、農業委員- 5.柴橋第一
- 市の中央部で耕地規模は小さい平坦部。
果樹水稲の複合経営中心。
平成18年7月26日設立。
組合長は、農協理事- 6.高松
- 市の西部の地区で一部中山間地あり。
果樹水稲の複合経営中心。
平成18年4月26日設立。
組合長は、農協理事
○ミニライスセンター建設中。- 7.醍醐
- 市の東北部で中山間地あり。
平成18年5月2日設立。
組合長は、農協理事- 8.白岩
- 市の北西部で山間地の集落を抱える。
果樹水稲の複合経営中心。
平成18年3月9日設立。
同年4月7日・農用地利用規程認定。
組合長は、農協理事- 9.三泉
- 市の東部、さくらんぼの先進地。
平成11年2月22日設立。
同年3月19日農用地利用規程認定。
組合長は、農協理事兼農業委員
○機械利用組合設立、ミニライスセンター建設中。 - 農地集積のモデル事業の取り組み(農地保有合理化担い手育成地域推進事業の実施)
- 各地区における改善組合の設立と同時に、その主要な取組みである農用地利用改善事業(農地の担い手への集積・連坦化)はどのようにあるべきかのモデル地区の形成が必要だった。
そこで、寒河江市西根地区の一部の水田地帯に限定し、土地改良区が中心となって保有している地図情報システムを活用した農地集積事業を実施している。
これは、平成16年度より(財)山形県農業公社(以下「公社」という。)が実施する「農地保有合理化担い手育成地域推進事業」の地区指定を受けて実施している。
この事業では、当該区域の農地をいったん農地保有合理化法人である公社で借入しこの地区の担い手に連担化して集約するもの。
農業委員会は、公社事業の業務委託を受けており、当該地区の農業委員が事業の計画段階から参画した。
担い手への連坦化した農地集積計画の策定、関係者への事業説明会や農用地利用集積計画書の作成を行い、平成17年度において計画区域52.1haのうち27.5haに新たに公社を通じた賃貸借権の設定をおこなっている。
この結果、相当数分散していた耕作地が1〜3箇所程度に集約・団地化され、作業が飛躍的に効率化している。
本事業は、寒河江市における地図情報システムを活用しての農地集積のモデル的事業であり、今後他の地区でも農地集積を推進していく場合の様々な課題やその解決方法が見えてくるものと考えられている。
- (3)今後の課題・活動のあり方
-
- 品目横断的経営安定対策に向けた取組み
- 市内全地区に改善組合が設立されてことを受けて、品目横断的経営安定対策のメリットを最大限受けるため、改善組合内における複数の集落営農の組織化を推進していく必要がある。
寒河江市の認定農業者は果樹との複合経営、花卉などの施設園芸農家の占める割合が多く、稲作単一の経営体は無い状況。
したがって、認定農業者だけで寒河江市の水田農業を支えきることは困難との見通しから、集落営農の組織化が急務となっている。
これまで、改善組合設立に連携して取り組んできた市、JA、土地改良区とともに、組織化を推進していく計画だ。 - 農地集積の取組み
- 本市の担い手の耕作地は、規模拡大とともに広域化しており、改善組合をまたいで耕作地が分散していることもまれではない。
集落営農組織の構成員の耕作地も同様の状況にあることから、集落営農組織の対象エリアの設定は綿密に行う必要がある。
エリア内における3分の2以上の農地の集積を行うためには、集落営農組織相互の耕作権の移動も課題となってくる。
このため、土地改良区の地図情報システムの活用を図りながら、農地の集積計画の策定、権利設定の方法等を具体的に検討・推進することが課題となってくる。 - 遊休農地対策の実施
- 昨年の農業経営基盤強化促進法の一部を改正する法律の施行により、農業委員会の遊休農地対策の強化が求められている。
これまで、農業委員会では単発的な農地パトロールの実施などは行ってきたが、本年度より各地区の改善組合との共同行動として取り組むこととした。
改善組合の主要な取り組みとして耕作放棄地の解消があり、中山間地における農地の荒廃を防ぐことは困難な面があるが、平坦地の優良農地を荒廃させない取組みを一体となって推進していくことにしている。
事例発表資料
関連項目