遠野市農業委員会
推進体制の整備と地区担当制の明確化により、解消に向けた活動が増加
1.遊休農地活用条件整備事業を活用し認定農業者へ利用集積(平成9年度〜)
遠野市農業委員会は、綾織町地区における遊休農地活用条件整備事業を推進するため、「遊休農地活用推進協議会(構成員:県農地管理開発公社=現在の県農業公社、農業協同組合、農業共済組合、土地改良区、市、農業委員会)」を設置するとともに農地流動化推進員を中心に、また農地部会、振興部会その他の会議等を通じて機会あるごとに遊休農地の活用や解消を働きかけてきた。
また、併せて同協議会の構成員からの指導協力を得ながら作物の選定、栽培、管理に関する支援活動を実施している。
最終的には、認定農業者1名が、自己所有する草地32アールに隣接する遊休農地(旧樹園地53アール)を売買により取得し、草地として再生した。
2.遊休農地解消対策検討委員会の設置(平成13年度〜)
遠野市農業委員会の遊休農地対策は、平成12年度くらいまでは散発的で取り立てるほどの実績、成果は挙がっていなかった。
しかし、平成9年度に農業委員会が実施した遊休農地調査の結果(約41ヘクタールが耕作放棄)やシュミレーションによる農業従事者の減少傾向に危惧を感じた同市農業委員会は、本格的な遊休農地対策に乗り出した。
平成13年6月に農業委員会内に遊休農地解消対策検討委員会を設置。現状の点検から復旧整備費用のシュミレーション、遊休農地利活用にあたって考察される作物別費用や粗収益額等の比較まで盛り込んだ解消推進マニュアルを策定し、組織的な活動実効計画も立てて実行している。
なお、平成14年4月に作成した「遠野地域農業再生運動」推進要領において運動の具体的内容を掲げているが、3つの重点事項のうち、農地の確保・保全活動の推進項目として「遊休農地・耕作放棄地の実態把握と有効利用の推進」を挙げ、実践計画においても掲げている。
地区担当制を実施したことにより、部分的ではあるが、遊休農地の解消に向けた動きが目立ってきた。
個々に担当地区の農地パトロールを実施した結果を、情報として近隣農業委員と交換し合う。
数人で現地を確認し、所有者も確認する。
解消の予定時期を定め、その場所に適した作目導入の相談も含め、親戚や担い手農家への集積を目指して行動を展開している。
3.その後の遊休農地解消実践事例


(1) フキ栽培を通じた遊休農地解消活動(計2筆 約43a)
遠野町地区では平成12年度までに実施した耕作放棄地等の状況調査終了後、同地区の解消方策のひとつとして平成13年、調査に携わった同地区の農業委員3名が発起人となって「百生夢創会(ひゃくしょうむそうかい)」を立ち上げた。
農家18戸と生活改善グループなど3団体でつくったこの会は、「長生きして夢を語れる農業を」との思いを込めて名付けられた。
会の事務局長は認定農業者でもある伊勢高之農業委員で、同年5月、当該農地を6年の利用権設定により賃貸借している。
借りた農地にはミズフキを植えた。労力のかからないミズフキを栽培することで「農地を守りながら収益をあげる」試みである。
単年度では無理でも、中期的には関係者が儲からなければ活動は続かないとの思慮もあった。
(2) 牧草地として利用集積した遊休農地解消活動(計3筆 約1.5ha)
青笹町地区の平坦部にある優良農地だったが、高齢化と後継者難から長年雑草地化していた遊休農地を農業委員会が重点地区として位置付けた。
平成13年に同地区の4人の農業委員が中心となって地権者の同意を取り付け、受け手となる認定農業者の酪農家と結び付けた結果、農地を借り受ける酪農家が大型農機で雑草をすき込み、みごとな牧草地によみがえった。
年内解決をと期限を定め、集中的に取り組んだことが成果に繋がった。