葛巻町農業委員会
利用集積と豆まき運動。発生防止に向けた啓発活動も盛ん
1.3年間で20haの遊休農地を解消(平成14年度時点)
(1) 畜産農家へのあっせん
葛巻町では遊休農地について、平成8年、9年の2ヶ年で現地調査を行った結果、105haの遊休地が発生していることが判明した。
主な発生場所は農家の離農後地、養蚕不振に伴う荒廃桑園、市街地周辺の高齢農家の農地、沢沿いの小区画の農地などであった。
農地流動化専門員、農地流動化推進員が農地所有者を訪問し、売買や貸借での有効利用を説き、農地保有合理化事業を導入して担い手農家、新規就農者等へ集積している。
活動の結果、3年間で20haの遊休農地が解消された。
この中にはIターンで新規就農した30代の酪農家と、同じく30代の牧羊家へのあっせんも含まれている。
中山間地にあっては、このような家族が2組も移住して地域に新しい風を吹き込んでおり、周囲の農家にとってもいい刺激になっている。
(2) 豆まき1キロ運動

豆のでき具合をみる農地流動化推進員
星野地区では「豆まき1キロ運動」を展開して、遊休農地の有効利用と解消に取り組んでいる。
星野農家組合(遠藤勝芳組合長、昨年まで農地流動化推進員)が用意した1キロの大豆、小豆の種50袋を希望する農家に配布して、それぞれの遊休農地や畑で栽培してもらっている。
この運動は、平成12年度からはじめたものだが、酪農地帯の当地区でも大型機械の入らない小面積の農地は借り手がなく、ほっておけば遊休地化する恐れもある農地でも取り組んでいる。
参加する農家もだんだん増えており平成14年度は、38戸で約4haの栽培面積となった。
組合のうち3戸の農家では、無農薬大豆「鈴の音」を30アールで栽培しているが、この大豆は盛岡市の業者により「昔の味・本物の味 星の農家組合の納豆」として製造販売されており、1個100円でも飛ぶように売れているという。
2.遊休農地解消・発生防止に向けた啓発活動(平成15年度)
(1) 道路への広報看板設置による意識啓発

葛巻町は積極的な広報活動を展開している。
そのうちの一つが国道沿いへの広報看板の設置である。
看板は、選挙ポスター掲示用の看板を再利用してつくったもの。
国道沿いの約300メートルの区間に農業委員自らが7枚を設置した。
看板に書かれている内容は、「農地のことは何でも農業委員会へ」「遊休農地を解消しよう」など農地関係のものが5点、ほかに農業者年金、全国農業新聞関係となっている。
道行く人は常に見かけるため、農業者ばかりでなく村内住民への意識付け効果は大きなものがある。
あわせて農業委員会の存在もアピールしている。
(2)広報車を利用した農地パトロールの実施

農業委員による農地パトロール
葛巻町は農地パトロールに町の広報車を使っている。
パトロール車両には「農地パトロール」の文字を表示した。
図面をチェックし遊休農地等のパトロールを行いながら、農地の有効利用と違反転用の防止を呼びかけ、遊休農地の解消を訴える広報活動も行っている。
(3)町広報を活用した啓発活動

広報10月号

広報12月号
広報活動としては紙の媒体もあるが、葛巻町では単独での農業委員会だよりは発行していないものの、毎月発行している町広報に農業委員会のコーナーを掲載し地域密着型の情報提供や呼びかけを行っている。
委員会コーナーは、スペースこそ1ページの内3分の2程度だが、顔写真入りで農業者や農業委員の声を掲載しながら、その声のなかで家族経営協定や農業者年金などの農業委員会活動をうまくPRしていて、単なるお知らせに終始しない絶妙な形態になっている。
遊休農地に関係するコーナーとしては、10月号には9月に行った農地パトロールの実施状況を紹介し、12月号には意向把握をともなう遊休農地調査実施についてお知らせと問いかけをしながら意識啓発に結び付けている。
3.最新の実態把握を地区担当委員が調査実施(平成15年度)
広報くずまきにもあるように、平成15年11月から16年2月にかけて遊休農地の実態把握調査が各地区の担当委員により行われた。
調査内容は、1「今後の農業経営の意向について」と、2「耕作していない農地の有無について」。
調査形態は農家訪問タイプで、調査票の持参による聞き取り調査となっている。
葛巻町では、この調査結果に基づき最新の遊休農地情報を整備し、さらなる解消実践活動を展開することとしている。